三億の鼓動

まんが同人誌昔ばなし

そもそも同人誌という存在がどのように生まれたのかというお話です。

1.はじめに

同人誌という趣味があります。

サークルと呼ばれる集まり(一人の場合もあります)が、発行した同人誌という本を楽しむ趣味です。

漫画だったり小説だったり、写真だったり内容はいろいろです。

そしてその同人誌を売ったり買ったりする場があります、同人誌即売会です。
そのほかに書店などに販売を委託したり、インターネット上で売買されることもあります。

そのような文化が同人誌を中心として存在し、大規模なものに発展しました。

2.投げかけられた疑問

荒れ果てたインターネット荒野ことTwitterにてある日このような疑問が投げかけられました。

「趣味なのに人からお金をもらって続けるのはおかしいのではないか」という疑問です。

お金のやり取りが発生することで、売り手側と買い手側が不平等になるのではないかということでもあるそうです。

こういった疑問が生まれることは別に悪いことではありません。

知らない世界のことですから、疑問に思ってもしかたがないことです。

同人誌が売買されるこの文化がどのように発生したのかざっくりお話したいと思います。

3.同人とは

同人という言葉は、現代ではあまり使われなくなりました。

共通の趣味を持つ人、団体。という意味です。

そしてその同人が作った本を同人誌、と呼びます。

つまり同人誌は共通の趣味を持つ人・団体の本です。

もともとは文芸誌の一種として明治時代に生まれたものです。

時代が下り、マンガなどでも同人誌が作られるようになりました。

4.同人誌の誕生

同人、つまり同じ趣味の人間が集まり結社を作ります。

結社というとアヤシイ感じがするかもしれませんが、要は集まりです。

結社に所属する者が何か作品を発表する場として、皆で雑誌を作ります。

昔(具体的な歴史の話をするとややこしくなるので、ざっくり昔としておきます)は印刷技術がそれほど高くありません。
なのでその当時は同人誌は紙に書いたものを直接回覧していました。

そのうち印刷技術が発達し、ガリ版などを使って少部数の本を発行することができるようになりました。
そこで同人誌に載せたい原稿ないし印刷に必要な経費を供出し、同人誌を発行して結社で分け合い読むという文化に発展します。
町内のミニコミ誌を原稿とお金出しあって作るのと一緒です。

このあたりで、皆様が想像する同人誌という形になりました。
同人誌とは同じ趣味の人間があつまった結社が発行する機関誌だったのです。

5.同人誌即売会の誕生

そのうち結社のメンバーではない者がその機関誌を欲しがるようになりました。

そこで機関誌に寄稿する/経費を支払う相当分をお金で支払うことで、本だけを手に入れるという仕組みができあがりました。
ここで同人誌を売り買いするという文化が誕生したのです。
いわば自費出版を手売りするといった具合です。

そして時代は進み、結社はサークルと呼ばれる集まりになり、
多くのサークルが生まれ、発行される本の内容も多種多様なものが生まれました。

オリジナルの漫画、パロディ(二次創作)、評論…etc.etc

印刷技術も発達し、多種多彩な本を作ることができるようになりました。

こうすると他のサークルの本もいろいろ欲しくなりますよね。

ということで、サークルが一堂に会し、一斉に同人誌の売買を行う場が生まれました。
これが同人誌即売会です。

6.そして現在

現在ではサークルとはいえメンバーは一人というような状態が多くなりました。
(まだ複数人で活動しているサークルはあります)
(余談だけど”個人サークル”って言葉死語になったよね)

源流とは少し離れた形態になっていますが、基本的な考え方は同じです。

同人誌とは同じ趣味の者が趣味を共有するために発行された本です。
サークルはその本を手に入れるために支払ってほしい価値を設定することができ、
欲しい者はその価値をお金という通貨で支払う、それだけのことです。

売り買いというとどちらかに優位性を感じるかもしれませんが、
本質的に売る側と買う側は平等です。
同人誌という価値を通貨で交換しているだけにすぎません。
欲しいものは支払い受け取る、不要なものは支払わない、それだけのことなのです。

そして得た対価を糧に次の本を作る、こうして文化が綿々と続いていくのです。
ここを無料などにしてしまえば、無限に経費が発生するだけで文化はそこで途絶えるでしょう。

オリジナル(一次創作)だろうがパロディ(二次創作)だろうがそこに違いはありません。