三億の鼓動

他人の同人誌の値段に文句を言うのは失礼インシデント

おっす!久しぶり

Twitterでレスポンチバトルをするたびに同じことを繰り返して言ってるので、
そうだ俺にはちゃんとアーカイブする場所があったんだと思い出してこれ書いているよ。

本日のレスポンチバトルのネタは「他人の同人誌の値段に文句を言うのは失礼だ」ということ。

割とこの話も定期的にでてくるよね。

1.あんたのやってることはすっごく失礼

発端はだいたい女性向け界隈で発生した、毒マシュマロとか言われる匿名のメッセージサービスでのコメントだ。

今回は「1ページ×10円だと280円になるはずだから28Pで500円になるのはおかしい」と主張している人だ。

うん、1ページ10円ってどこから出てきた?
コピー機じゃねーんだぞ、というのは置いておいて、まず最初に言いたいのが、このマシュマロを送った人がやったことは「クソ失礼」なことだということだ。

そして自覚はないだろうが、やっていることに「加害性がある」と思ってほしい。

もし自分の指摘(値段が不当ではないか)が正当なものであると思っているなら、正しくもないと思ってほしい。

ラーメン屋さんに入って、ラーメンの原材料の小麦粉は1kg350円くらいだからラーメンが1杯700円なのはオカシイ!って主張しているのと一緒だ、そのくらい失礼なことだと思ってほしい。

2.公式のガイドラインの受け取り方

一次創作だろうが二次創作だろうが、同人誌の売価は頒布する本人が自由に決めていいことだ。

すると次は二次創作においては「原材料費を大きく上回らない対価の範囲で活動するように」と公式とガイドラインに書いてあるという話になる。
確かにその通りだ、そう書いてある。

二次創作をする上で、公式のガイドラインがあるのであれば、それに従うのは大前提だ。

だが最初に言っておく、
判断するのはおまえじゃない、公式だ。

ここで公式のガイドラインを額面通り受け取るのも正しいと思うが、
ここに具体的な数字が無いのを察してほしい。
具体的に何%までOKと書いてあるわけではない。(書いてあるなら守ろう)
だから1円でも利益をだしてはいけないと強迫的になるのはまた違うと思う。

もし、ある日突然「こんなに利益を出してはいけません」と公式がお怒りになることがあるかもしれない。

でもその判断をするのは公式であって、おまえじゃない。

どこまでがボーダーなのか、どこからが過剰なのか。
それらを判断するのは外ならぬ公式の仕事だ。

公式ではない人間が「利益をだしてはいけない」と指摘するのは、
公式が持つ権利を勝手に行使しているのではないだろうか。

5/10追記

かといって公式に通報すればいいという話ではない。
公式様は多忙であらせられる、お手を煩わせるなど畏れ多い。

…よけいな仕事が増えるだけだから余計な事すんなってことね。

3.同人誌における原価の考え方の考察

少し話が前後するが、同人誌における”原価”について考えてみたい。

同人誌の原価の範疇の話をはじめるととてもややこしいことになる。
発行者の立場によって有利不利が発生することがあるからだ。
発行者の立場を無視して原価を決めつけるのは、同人誌という文化の継続性にとって困ったことになる。

たいてい毒マシュマロを送るような人は、同人印刷屋さんの価格表をひっぱってきて、印刷費の原価だけで話をしようとする。
でもそれは本を”印刷”するときにかかった原価であって、同人誌が”発行”するまでにかかった原価ではない。

例えば原価に交通費を含めるか考えてよう。
これだって都内在住に比べて地方在住者は永遠に不利なままにになってしまう。
コピー本だって、実家在住で家にコピー機がある人とそうじゃない人でも差ができてしまう。

同人誌を作るソフトウエアのお金は?機材や道具は?消耗品だってある。
一人で作るのか、複数人で作ったのか、それぞれ同人誌を作る人の立場で事情は異なってくる。

それらを全部飲み込んだうえで、過剰な利益とは?と考えるべきではないかと思う。
こう言っちゃ語弊があるが、正直、同人誌でよっぽどのことをしなければ公式の権利を侵害するほどの利益を出すのは難しいと思う。
原価の掛け算ができるなら利益の掛け算もできるでしょ、いったいどのくらいの桁で騒いでるのよ。

100万歩譲って最初の「1ページ×10円だと280円になるはずだから28Pで500円になるのはおかしい」という主張をの通りに仮定したとして、1冊あたり220円の利益だ、100冊売ってやっと2万2千円。そんな額で裁判沙汰になるかな?
可能性はまったく0ではないが、そのくらいの額は地方の人間なら交通費とイベント参加費を出したらおしまいだよ。他人がガタガタ言うんじゃねえよ。

もちろん、私だってじゃんじゃん利益を出せと言っているわけではない。
どう判断するかは公式のみぞ知る、である。

そんなことより、踏んじゃいけないラインというのが他にたくさんある。
よく見かける「利益を出さないように相当分を無料グッズをつけます」のほうがかなりヤバイ。

いいことだと思った?
グッズのほうが簡単に権利を侵害する。被害を被る企業が多いからだ。
しかも無償なんかは不当廉売と刺されても文句言えないし、海賊版認定される可能性も高い。
よくよく考えて利益額を調整したほうがいいし、その判断はサークル主が決めることだ。

前にも話をしたのでそっちも参考にしてほしい。
「二次創作で利益を出すのは悪いこと」という謎ルール

 4.頒布=無償じゃないよ

同人誌即売会のルールに「頒布」と書いてある、だからホントは無償が前提だ。

そうご指摘する方もいらっしゃいますが、これも間違い。

頒布という言葉に無償か有償かという意味はない。
有形的方法か無形的方法かも問わない。
ついでに言うが、利益のあるないも関係がない。。

同人誌即売会には、有償のものも無償のものもいろいろなものがある、
それをすべてひっくるめて指すときに、同人誌即売会の運営が便利な日本語として「頒布」を使っているにすぎないのだ。

たとえば「販売する同人誌を一部提出してください」と書いたとすると、これは無償の本だから提出しなくてもいいか、と解釈されるかもしれない、だから頒布を使っている。

なんらかの”建前”のために頒布という言葉を使っているわけでもない。そんな建前は必要ない。
そもそも即売会と名乗っているのに建前は必要ないのだ。

頒布という単語、あまり聞き覚えが無い単語だろう。
「頒布」というのは、同人誌の関係者が内側向けに使う符牒みたいなものなので、
外部の人に向かって「頒布って言ってるから無利益なんだ」って説明しても伝わりませんよ。

とにかく「頒布」は建前でも免罪符でもありません。お忘れなきように。

5.オペレーションの問題なんですよ

例えば原価が381円だったとして、その値段で即売会で販売するのはちょっとめんどうだ。

キリのいい400円にしたってめんどくさい、お釣りの用意が余計に必要だから。

だったらワンコインで済む500円にしちゃいたい、そう思うのがサークル側の気持ちだと思うし、買う側だって次のサークルに行かなきゃいけないから時間が惜しい。

同人誌即売会は1日限りのことが多く、そして開催時間が決まっている。

たった3時間しかないイベントで、いちいち小銭を数えるなんてことをしていたら日が暮れてしまう。

だったらキリよく500円でいいじゃないか、そのくらいの寛大な心でいてほしい。

もちろん、お釣りを用意するのが面倒じゃないと感じる人もいるので、それはそれなのだ。

6.繰り返すが、売価に文句を言うのはとても失礼

そうした各々の事情をまったく考慮せずに、自分だけの邪推で「本来この値段であるはずだ」と決めつけることが失礼以外の何だというのでしょうか。

失礼じゃないと思うならマシュマロではなく、名前を出して言ってごらんなさいよ、
私が飛んで行ってアナタ失礼ですね!とお伝えします。

「ジャンルに迷惑がかかる」というのもだいぶ謎ですね。
何がどうジャンルに迷惑がかかるのか、因果関係に実例を添えて明記してください。
同調圧力をかけて他人を自由にしたいという欲求はハッキリ言って邪悪だ。

ジャンルに学級会みたいなイチャモンを持ち込むほうが迷惑ですが?

おわりに.同人誌は自由です

同人誌の売価はサークルが自由に決めて良いものです。
同人誌の頒布量はサークルが自由に決めて良いものです。

そこに納得できなかっかったとき、あなたにできることは「買わない」ことだけです。

で、さ、

みんなそのジャンルなりキャラクターなりが好きで
マンガや小説やイラストが好きな同志なわけじゃん、だから同人なんですよ。

仲良くしようぜ