三億の鼓動

同人自伝

「おい、お前こっち来てちょっと手伝え」の一言からすべて始まったように思う。

2006年、私は東京の大学に受かったので、親の脛を齧って福井県のド田舎から上京した。まあ東京といっても八王子なんだけどね。

私はインターネットの世界に来るのが早かったので早熟だったと思う。物理メモリが8Mしかないようなショボいマシンで、ピポパポシャーシャーな頃からインターネットとパソコン、そしてオタク文化に触れていた。いや、見ていたと言った方が正しい。触ったことは無かった。

同人誌即売会というものが世の中に存在するのは知っていたし、都会にいる人たちが即売会に行って楽しんでいるのは知っていた。でもびっくりするほどド田舎の高校生にはそういったものを体験できる機会はついに来なかった。

上京して、どうしても同人誌即売会に行ってみたくて、当時属していたコミュニティが関わる同人誌即売会に行ってみることにした。少ないお金を持って「行ってみたい」の気持ちだけで、高速バスに飛び乗って仙台の地に降り立った。たまたま仙台に遠征開催しているときだったのだ。

お上りさん丸だしで仙台の街をうろうろして、予定時刻よりずいぶん前会場に着いた。そして着いた会場で一番最初に言われたのが冒頭のそれ。

そういえば即売会に行く前に、一度オフ会というものに顔をだしていた。そのとき知り合った人がスタッフをやっていて、なにやら企画のための作業がおいつかないから、その場で徴収されて手伝うことになり、気づいたら本部受付に座ってカタログを売っていた。

こうして同人誌即売会のデビュー戦を臨時スタッフとして飾ったのでした。

上京したての私は若気の至りが実体化したみたいな人間だったし、何が面白ろくて何が面白くないのかわかってなかったし、センスもないのに目立ちたがりという、どうしようもないクソバカだった。いろんな人に迷惑をかけた、さっきの初めての即売会も、帰りの電車賃足りなくて初対面の主催に1000円借りて帰った。

でもすごくいい思いをしてきたから、なるべく記録とかに残そうかなって思ったんですよね。

2023/4/5